最近ビルボードのランキング集計方法が変わったりして、ストリーミング重視の傾向が一段と強まってきています。
坂道シリーズはAKB系からの伝統を引き継いで、極めてCD偏重なビジネスモデルを採用しています。レコード会社としてはCD中心でやってくれるのはありがたい話でしょうから、このモデルが大きく変わることはないでしょう。
とはいえ、音楽業界のメインストリームがストリーミングに変わっていく中でこのままで大丈夫なのかと感じる人もいると思います。
今回はそのあたりの話を考えてみたいと思います。
そもそもストリーミングを気にすべきか?
そもそも論ですが、ストリーミングを気にすべきなんでしょうか?
個人的には現状で坂道シリーズはストリーミングを過度に気にする必要はないと思っています。
というのは、ビジネスモデルが明らかに普通のミュージシャンとは異なるためです。
坂道シリーズでの音楽というのは、音楽そのものを売っているというよりは、ファンづくりの入り口という要素が強いのです。
もちろん、「なんじゃこりゃ」となったらダメなので音楽などのクオリティは高い方がいいわけですけども、ストリーミングで聞かれることでファンが増えるのかは疑わしいように思います。
サブスクでの音楽の聴かれ方は「作り手のコンテクスト」(文脈)ではなく、「単体」が主流です。
「誰の曲かはよく知らないけど、この曲はいいよね」というのも多いと聞きます。私も20代後半で必ずしも若い世代の価値観が分からなくなってきているのですが(笑)
ですので、ストリーミングで聞かれても、それが握手会やミーグリに来るようなファンを大きく増やせるかは疑問です。ストリーミングでのヒットを狙うことがビジネスモデルにどれだけ寄与するかという話で、今はそこまで大きくないんじゃないかという気がします。
誤解がないように書いておくと、ストリーミングが伸びるに越したことはないです。大ヒットすれば、接触者が増えるのでファンは増えるでしょう。
でも、それを狙って制作するべきかというと、そこにコストをかけて期待通りのリターンがあるかは、どうなのかなあと感じるということですね。
「大ヒットする曲を狙って作れたら、みんなやってるわ!」という話ですからね(笑)
ストリーミングで跳ねる曲の特徴
とはいえ、ストリーミングをまったく無視してもいいのかと言われると、多少は気にしたほうがいいかもしれません。
では、ストリーミングで聞かれている曲の特徴は何でしょうか?
以下のビルボードの分析記事が面白かったので紹介します。

題材は「夜に駆ける」と「香水」なのですが、共通するのは「使われる音楽」ということです。
また、「夜に駆ける」というかYOASOBIは音楽を多面的に楽しめる仕掛けがあり、何度も聞きたくなるようになっているという指摘はなるほどなと思いました。
私はまったくやっていないので感覚が分からないのですが、最近はTikTokが起点になるヒットも多く、15秒で使いたいとなる楽曲をつくることが大事になっているようです。
また、若い世代に対しては「世界観・コンセプト、歌詞やキャラ設定の視点が大事になってくる」のではないかと指摘されています。
これは私が散々言っている「ビジョン」や「コンセプト」をはっきりさせろという話と通じます。
櫻坂になってからの曲だとあまり思いつかないですが、不協和音とかはもしTikTokがあったら使われたかもしれませんね。「僕は嫌だ!」ってめっちゃインパクトありますし、短い動画で使いやすいじゃないですか。欅坂のコンセプトを明確にした曲でもあるし、若い世代の心の叫びでもある。
若い世代の特に女性にユーザーが多いTikTokは、同性にも好かれるアイドルを志向してきたように思う坂道シリーズとしては無視できない媒体であるのではないでしょうか。
また、TikTok以前でも、大ヒットした「恋するフォーチュンクッキー」はディスコ調で踊りを真似してもらおうという仕掛けがあり、曲への接触者を大きく増やすことができた部分があります。
「鑑賞」よりも「自分の表現に使うもの」に音楽のメインストリームは変わってきている可能性が高いです。
坂道でストリーミングを伸ばすには
坂道シリーズの楽曲は完成度が高く、逆に言うと「使う余白」が少ないです。
また、乃木坂・櫻坂はコンセプトやキャラクター性がいまいちはっきりしていません(というかぶれている?)。日向坂はコンセプトやキャラクターはある程度はっきりしているものの、受け手に共感を呼ぶようなものとは少し違います。
これらが最近坂道シリーズ全般でストリーミングで伸び悩んでいる理由の一つでしょう。
また、歌詞で聞き手が共感し、エピソードを再構築(解釈)できるもののほうが良いという指摘もあります(以下記事)

このあたりが一つのヒントになるかもしれません。
同時に今は中高生はK-POP系のほうが受容されている傾向にあると思います。K-POPは自国のマーケットの狭さから海外に打って出ざるを得ない状況の中で、主にアメリカでもヒットする曲を生み出しています。
日本はマーケットが大きいため、海外に出なくても音楽ビジネスが自国で成立するわけですが、その分ガラパゴス化して独自の方向に行きやすいです。良し悪しは何とも言えません。
いずれにせよ、新しいファンのコアになる中高生にどうやって聞いてもらい、「いいね!」と思ってもらうか。
ここは大きな課題になっているのかなと感じます。
というわけで、結論的には「使ってもらいやすい音楽を意識する」・「音楽を何度も楽しめる仕掛けを用意する」・「コンセプトやキャラクターを”共感性”をキーワードにつくる」といったことが大事なのかなという感じです。
でもでも
ただ、私個人の感覚としては、「鑑賞」を売りにする楽曲群は残っていってほしいと思っています。
坂道シリーズの音楽は商業音楽ど真ん中ですが、その分完成度が高いものも多く、いろいろなコンテクストを楽しめる部分があります。
もう感覚が「おじさん」になってきているのかなと思いますが(笑)
でも若い世代にファンになってもらわないといけないし、なかなか悩ましいところですね。
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