櫻坂3rdシングルの3列目メンバーで歌っている「ソニア」。リップスティックをめぐる物語を描いている曲ですが、解釈が案外難しくて、色んな解釈がされています。
サビでは「ソニア」を繰り返しますが、これが人名なのか、そうでないのかでも解釈が多様です。
今回はそんな「ソニア」の私なりの解釈を書いていこうと思います。
登場人物
登場人物を整理してみると、以下の3人が出てきます。
- 僕
- リップスティックを塗った子
- ママ
この「僕」が誰なのかがまずもって問題ですが、恋人(彼氏)かお父さんだろうという解釈が多いです。私もそう思います。
また、ママは伝聞でしか出てこず、直接的に登場するシーンがありません。
時系列
時系列で見てみると、
リップスティックを盗んでこっそり塗った日
↓
「ある時」=ママのリップスティックに憧れていたという話を「僕」にした
↓
「今日」=どんなリップスティックを塗ろうか悩んでいる
大まかにこの3つを大きな出来事として、経過が重層的に歌われています。
長い時間を描いている、結構壮大な歌ですね。
ここからは順番に見ていきましょう
僕が聞いた話(1A~1B)
ある時、リップスティックを塗った子(以下彼女とします)が僕に対して「小さい頃さ、ママのリップスティックが世界で一番欲しかったんだよね。なんか無くなりそうで焦ってさ」という話をします。
おそらく彼女は細かい話をしていなくて、言っていても「こっそり塗ったことがある」程度しか話していないのではないでしょうか。
なぜなら、Bメロになると彼女の言葉ではない歌詞が出てくるからです。
「だからある日バッグから~鍵かけたんだろう?」
は、僕視点の言葉です。
ここから、僕は彼女がこっそりリップスティックを塗ったことを、話をされる前から知っていたことがうかがえます。
このため、「僕」を恋人だと解釈するのは困難です。この辺りは小さい頃から彼女のことを知っている人物でないと出てこない歌詞だからです。こういうシチュエーションがあり得るのは家族か幼なじみなどでしょう。
小さい頃にしたことですから、詰めが甘くて、リップスティックを盗んで、お風呂場に駆けこんだことは家族にバレていた可能性が高いわけです。
父が見た成長(1サビ)
1サビに関しては、掛け合いではないかという解釈もありますが、私は全て「僕」の言葉だと思います。
ソニアとかを抜いて色々私なりに補足すると、「それで自分で塗ってみたのかい?(君から見て)どんな(風に)鏡に映っていたの?(唇からはみ出していたけど、僕は)いつもよりもきれいだと思ったよ」となります。
彼女はこっそり塗ったリップを落とさず(あるいは落とせず)、お風呂場から出てきたのではないでしょか。そして、それを見た僕は「はみ出してるけど、きれいだね」と思った、という流れです。
ここから「僕」はお父さんの可能性が高いと私は思います。兄弟や幼なじみでは、あまりこうはならないような気がします。
娘が大人ぶって、リップを下手だけど塗ったことに成長を感じたというのが1サビの内容なのではないでしょうか。
また、1Bの「鍵かけたんだろう?」は直接見たわけではないことを匂わせており、お母さんが話したことを想像させます。「あの子、私のリップ取っていってね」という具合に。でも、二人ともそれをとがめず、娘の成長の1シーンとして見たのかなと思います。
娘の成長(2A~2B)
ここから話者が彼女に移ります。
「盗んだリップスティックを机に隠していることをママは知っているはずなのに、どうして怒らないんだろう?」と不安になったと吐露しています。
ここで時間が大きく動き、彼女は中高生、大学生年代と成長していきます。
あの時、ママが塗っていたリップスティックが全てだった彼女は、自分に合った色を探すようになります。
今日は何を塗ろう?(2サビ)
ここで話が「今日」にやってきます。
これが何の日なのかは語られておらず、私たちの想像に任されています。
サビでは「(今まで)色んなリップスティックを塗ってきたけど、今日はどんなのがいいか一人じゃ決められない。大人っぽいのもいいけど、今までで一番素敵な自分になれるものを選びたい」と彼女の思いが語られます。
この思いから「今日」はとても重要な日であることを想像させています。
今日のお父さん(大サビ前半)
ここで1サビと同じ歌詞が出てきますが、ここは「今日」のお父さんでしょう。
「あの日、リップスティックを塗ったとき、どんな風に鏡に映っていたの?」と彼女に問いかけます。
次に「だって」がありますが、この「だって」は解釈が難しいです。
お父さんのほうなのか、彼女のほうなのか。
楽曲的に転調して、盛り上がるところでもあり、一番感情がこもるところです。
私はここもお父さんなんじゃないかと思います。「だって」は理由を答えるときに使う接続詞だからです。「なんでそんなことを聞くのかって言えば」の言い換えなので、前からの続きとして言葉が続くのが自然です。
彼女から「なんでそんなこと聞くの?」とでも聞かれたのではないでしょうか。
それに対して「だって君は大人になるにつれて、どんどん表情が変わっていったじゃない(=どれも君らしかったよ)」と彼女に答えたのかなと思います。
彼女は「どれにしたらいいか分からない。だって、今日は一番素敵に見せたい日だ」と思っている。
でも、お父さんは「そうじゃないんじゃない?君にとってリップスティックってどんなものだった?」と思い出すように促しているように感じました。
あの日、ママのリップスティックを塗りたかったんでしょ?
唇からはみ出しちゃうようでも、気になんてしてなくて。
それを思い出しなよ、と。
リップスティックはダイアリー(大サビ後半)
それに対して、「リップスティックはあの日(リップスティックをこっそり塗った日)から続けてきた、日記みたいなものだよね」というのが彼女の返答です。
だから、最後に「今日の気分なら何色がいいかな」と選ぶ場面で終わるのではないでしょうか。
彼女にとって、あの日からずっと、リップスティックはその日(現在)の自分を示すものであり続けたのです。
だからこそ、誰かからどう見られるかじゃなくて、自分がこれがいいと思うものを選べばいいんだと思い直したように思います。
こんな感じで、この曲は欅坂→櫻坂で一貫したテーマであり続けている「自分らしく生きること」を歌っている楽曲なのではないかなと私は解釈しました。
ソニアとはだれか?
サビではソニアを繰り返すわけですが、単純に繰り返しているわけではなくて、ある程度意味があるように思います。
「ソニア」(ソフィア、ソフィーなどとも)はヨーロッパで使われる女性名ですが、もとは「ソピアー」という古代ギリシア語で「知恵」を意味する言葉です。同時に女神の名前でもあります。
1番サビでのソニアは娘への呼びかけとして使われているように思います。父親にとって、娘は女神のようなものですからね。
一方、娘視点の2番サビでは自分に呼びかけるのはおかしいので、娘ではないはずです。私はお母さんへの呼びかけであると解釈しました。同時にそれはリップスティックのことでもあるはずです。どっちでもあるというか。
この楽曲でリップスティックはお母さんの象徴として語られているからです。この娘からすれば、お母さんは知恵を持っていて、色んなことを教えてくれる女神であり、そのお母さんが愛用しているリップスティックを塗ることで、自分もお母さんに近づけるのではないかと思っていたはずです。
そんなお母さんに「ねえ、今日はどんなリップ塗ったらいいかな?」と聞いているのではないでしょうか。
以降もお父さん視点では娘、娘視点ではお母さん=リップスティックを意味しているように考えられますが、最後の「今日もソニアソニアソニア」のところだけは、「自分の持っているリップスティック」だと思います。
お母さんがではなくて、自分で決めるんだという意思を持ったからです。
総じて言えば、特定の誰か1人ではなく、自分にとって大切な存在への呼びかけとして「ソニア」が使われているように解釈できます。
お母さんはどこへ?
登場人物の1人であるお母さん(ママ)は娘の思い出話でしか出てきません。
リップを悩む場面にしても、普通はお母さんに聞きそうなものです。
でも、本人にはどうも聞いていないような感じです。
また、お母さんがリップを盗んだことをとがめていないのも気になります。
ここから、お母さんは少なくとも「今日」の時点で2人のそばにはいないことが想像されます。
もしかしたら、亡くなっているのもかもしれません。
だからこそ、自分のリップを盗んだことを怒らなかったのではないでしょうか。「わたしは娘が大人になってからリップをあげるということができない」ということを知っていて、「プレゼント代わり」にリップをとったことについて何も言わなかったのではないか、なんてことを思いました。
盗んだ本人が「なんで何も言わないんだろう?」と不安になるぐらい何も言っていないようですしね。
この辺は妄想がたくさんです(笑)
でも、そういうのを匂わせるような言葉の雰囲気があります。ここまで想像させるだけの言葉選びはすごいなあと思います。
今日とはいつか?
「今日」については、「素敵に見られたい」と思っているので、何らかのハレの日なのかなと思います。
お父さんもいるので、一番分かりやすいのは「結婚式」ですが、これは何でもいいかな(笑)
自分なりに想像してみるといいのではないでしょうか。
3列目メンバーへのメッセージ
前も書きましたが、これは3列目メンバー(BACKS)に向けてのメッセージでもあると思います。
外部からの評価を気にして、自分を捨ててはいけないよ。
何をするか、何をしないか、自分で決めなさい。
どうしてアイドルになろうと思ったの?
どうして欅坂に入ろうと思ったの?
それを思い出しながら、自分らしく活動していきなさい。
というメッセージを感じました。
ソニアは深みのある楽曲
ソニアはぱっと聞くとかわいらしい曲ですが、歌詞を読みこむと色んな想像をさせてくれる良曲です。
人によって解釈が違うというのは、それだけ深みがあるからです。
本質が伝わっていれば、枝葉は人によって違っていいわけで、むしろ読み込む楽しさがあるという意味でとても素晴らしい楽曲だと思います。
みいちゃんがブログで
私は大切な人を思い出したり、
小池美波公式ブログ「☺︎」
想うことで、深く、切なくなる楽曲だと
受け取りました。
と書いていましたが、これは私とかの解釈と近いような解釈をみいちゃんもしてるのかなと思います。
シンプルにすごくいい曲だなと思いますね。
普通のアイドル楽曲とは違って、歌詞が重層的な構造になっており、大切な人への愛情、弱さ、悩み、迷い、憧れといった色んな要素がちりばめられており、聞けば聞くほど味が出る曲です。
3rdシングルはユニット曲を解禁したこともあり、全体的にカップリング曲のレベルが高い!
これからもたくさん聞きたいなと思います。
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